嘘と花火

4月30日(土)からベトナムは4連休であった。30日は戦勝記念日。ベトナム戦争時の南ベトナム、サイゴン陥落の日である。そして1日は勤労感謝の日。要するにメーデーなのだが、なぜか3日間なのだ。これは土曜日が戦勝記念日だったので月曜日が振り替え休日、日曜日がメーデーだったので火曜日が振替休日という説と、メーデーが3日間だという説とあるのだが、、、、どの看板を見ても5月1日がメーデーになっているので、前者が正解なのだと思う。
更にダナンでは、29日、30日と国際大花火大会である。例年日本も参加しているのだが、今年は当初から参加しておらず、昨年は日本も参加していたとのこと。最初から参加予定はなかったみたいで、自粛と言うことではないらしい。

さて、この4連休に対して、学生の反応は面白かった。と言うか、またまた呆れるネタとなった。

当初学校から提示されていた休みは28日から1日であった。ところが30日から3日と訂正になり、29日まで授業を行うことになった。すると夕方17時から19時に授業を行う現役看護学生から、「花火で道が込むので家へ帰ることができません。授業を休みにしてもらえませんか」と相談があった。

一瞬、「それはそうだな」と思った。寮生活の学生もいるので連休前に帰宅したい学生もいるだろう。それはわかる。

でも、そこで2つのことを思い出した。1つは10年前のハノイである。その時は2000年とハノイの990年祭が重なり、9月頭の連休はハノイ人にとって重要な休みだった。そして、地方組もこぞって帰省したのである。ところが、それに便乗した学生がいた。市内は交通規制でバスターミナルに移動するのに時間がかかる、と言う事情を主張し早引けしようとしたのである。事情がわからなかった我々ハノイ講師陣は、まんまとだまされたのである。その学生はハノイ人だった。帰省も何もないのである(笑)北部の景勝地サパの最寄り駅、ラオカイに実家がある学生が帰省し、そこに一緒に遊びに行こうとしたのだ。

更にもうひとつ思い出した。いつもの日本料理Kの店員で、仲良くしているTちゃんに、「先生、花火21時から。仕事ですから見ません。でも、テレビがあります。お店の前から少し。先生と私、花火を見ます」と誘われていたのだ。(考えてみれば、短期間でけっこう日本語上達したなあ。)

つまり、花火は21時から。授業終了は19時である。別に、授業が終わってから帰宅すればいいし、帰省するにしても花火は見るんだろうから、当日中に帰れなければ翌朝帰ればいいだけの話である。

ちょっと考えればわかる話。まあ、実際のところ20時半頃から花火は始まったわけだが。

「花火は21時からですね。授業は19時までですから、うちへ帰る人は授業が終わってから帰りなさい。授業は予定通りやります。花火を理由にした欠席は認めません。その日が試験だったら、受験しない人は0点です」と宣言。面白いことに、反論は全く出なかった。

要するに、ベトナム人の嘘には、大した悪気はないのだ。
うまく相手が乗ってきて、自分の要求が通ればラッキー。バレタラ残念でした。
そして、その手口(なんて言うと悪事のようだが)は単純。ちょっと考えれば見抜くのは簡単なのである。伊達に10年以上ベトナム人と付き合ってないですから、最近はまず引っかからないのである。

悪気はないとは言え、日本人は、少なくとも僕はこういう学生たちの姿勢を好まない。
特に、これから介護を学ぼうとする看護学生たちである。
指示を守らなかったり、自己流に解釈して平然としていたり、嘘をつくことは利用者さんや患者さんの命に直結するのだ。それに、一緒に仕事をする仲間の信頼を失うことになりかねない。

「本当に介護を勉強したいのなら、本当に日本で仕事がしたいのなら、嘘はやめなさい」もう何度話したかわからないが、懲りないねえ(笑)

この話、午前中の卒業生クラスで話したら、まあ少しお姉さんの大人クラス。何度か簡単に僕が嘘を見破ったことがあったので、またどうしても日本で仕事をしたいと希望している学生の集団なので、現役クラスの出来事は笑いの種にしかならないだが、、、、さすがに今回は呆れていた。

そうそう、結局29日は卒業生クラスも、現役クラスも「試験」となったのだが、現役クラスの比較的成績の良いまじめな学生ふたり組が、前日になって「先生、明日は試験が終わったら、その後休んでも良いですか」「理由は何ですか?」「寮の部屋の引っ越しをします。明日しなければなりません」

もういい加減にして欲しいのだが、「なぜ授業の前や後に引っ越しをしないのですか?」と聞くと返答がない。「試験を受けなくても良いから、教室には来ないで、引っ越しをしてから花火を見に行きなさい」と言うと、ふたりの目にははっきりと「落胆」と書いてあった(笑)

この話、翌朝卒業生クラスで話すと、全員大爆笑。授業を一緒に受けて日本語を勉強しているA先生が、烈火のごとく怒るというオチがついた(笑)


「先生、○×さんは病院で実習ですから、休みます」→ このクラスの学生は、この日本語の授業がある時間帯に実習はありません。学校がそう決めています。

「先生、○×くんは熱がありますから、部屋で寝ています」→ 一昨日は頭が痛くて、先週はお腹が痛くて、今日は熱ね。明日は風邪かな?大変ですねえ(笑)


もっともらしい嘘をつかなくても良いから、「実習が忙しくて、疲れましたから今日は休ませてください。自分で日曜日に勉強して、わからなかったら質問します」って言えばいいのにね。それが仮に嘘だとしても、その方が素直だし、自然な嘘だ。


さて、29日である。卒業生クラスは試験を終え、予定通り授業を終えると、翌日に予定している「遠足」の係分担を大騒ぎで決めていた。

現役看護学生クラスは、さて何人休むかな?と思って教室に行くと、まあ予想通りだったが全員出席である。要するに、「花火の交通規制」も「寮の引っ越し」も、事実なんだろうけど「帰れません」「今日しなければなりません」は花火を見に行くための口実だったんだろうね。

試験終了後、連休明けに勉強する課の単語の解説。狙ったわけではないのだが「嘘」が出てきた。「皆さんが得意な、嘘ですね」と話すと、下を向く学生と失笑する学生が半々ぐらいだった(笑)

以前、日本ベトナム教育セミナーで日越の教育関係者と話したとき、「ベトナムの学生は平気でカンニングをしたり、嘘をついたりしますね。なぜでしょう?」と聞いたことがある。誰に尋ねても反応は同じで、苦笑しながら「試験や勉強に対するストレスだと思う」という話だった。

これは学生たちを見ていて思うのだけど、日常的に勉強している学生は、短時間でも予習復習に励み、わからなければ質問してくる。しかし、大半の学生は単語などの予習は当然としても、授業に出るのが精一杯。復習している時間がない。これは実習も忙しくなる3年次の看護学生に、第2外国語を短期集中で学ばせているわけなので、物理的に時間がないのはわかる。わかるが、3分の1ぐらいの学生は、時間がある卒業生クラスの学生より成績が良かったりするのだ。つまり、本気の学生は本気で取り組んでいるのだ。その忙しさは、経験したものでなければわからないだろう。僕は「大変なんだろうなあ」と思うしかないのだが。

要は「要領」の問題なのだけど、どうも「試験の前に詰め込んで、それを試験でアウトプットする」のがベトナムの一般的な学生の勉強スタイルなのだと思う。学生に聞いてみると、ものすごい量の暗記が必要なのだとか。看護学生は学ぶ項目が多いから、余計なのでしょうね。

そりゃ、普段コツコツ勉強せずに試験前に一気に覚えようとすれば、ストレスたまるでしょうねえ。気持ちはわからないでもない。でも、明らかに言えることは、そう言う学習スタイルでは、外国語の習得は厳しい。「牛歩無限」という言葉があるが、毎日コツコツと地道に学んでいく姿勢を、学んで欲しいなあ、日本語の学習を通して。

英語で失敗し、中国語もベトナム語も中途半端な僕から、自戒の念を込めて。



さて、花火である。「先生、花火を見ましょう」と言っていた学生もいたが、授業が終わるとソソクサと教室を出て行った。4連休とは言っても、半分は病院での実習で潰れてしまうのが実状らしい。まあ、看護学生なんてそんなものだ。寮に住んでいる学生が「明日と明後日は病院で実習です。連休の後に試験がありますから、家へ帰りません。今夜は友だちと花火を見ます」と言って寮に戻っていった。

僕は、約束通り「K」へ。
すでに特設ステージで人気歌手が歌う姿がテレビで流れていた。テレビで全国中継されているらしく、ハノイに居る教え子たちから「先生、花火を見ていますか?私はテレビで見ています。羨ましいです」などなどメールが届いた。こっちも、「ドン!」と打ち上げられる度にテレビの音声とは微妙にずれて聞こえてくる音を聞きながら、時折外に出て眺めながらひとときを過ごした。


ちょっと歩けばもっときれいに見える場所もあるんだけど、「見たい」より「一緒に見ましょう」の方が勝っていたってことですかね(笑)

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